先日「つみたてNISA 上限引き上げへ?」という記事をアップしました。この時点では各メディアが報じていただけで、金融庁からの正式な発表があったわけではなかったのですが、
2022年8月31日に金融庁から2023年度税制改正要望についての資料が出されましたので、その中でNISAについての内容に絞って確認したいと思います。
金融庁 2023年度税制改正要望
2022年8月31日、金融庁から2023年度税制改正要望が公表されました。
そもそも税制改正って?ことですが、簡単に言うと「税金に関する制度を見直す」ことです。国の財政状況等を鑑みて、毎年行われています。
税制改正の流れは次の通りで、今回は最初の「各省庁から税制改正要望が提出」の部分です。あくまで要望であって、実際に実現されるかどうかはこれから議論されるってことですね。
- 8月頃:各省庁から税制改正要望が提出
- 9~10月頃:政府税制調査会の議論
- 11~12月頃:与党税制調査会の議論
- 12月中旬:与党が税制改正大綱を発表
- 12月下旬:政府が税制改正の大綱を発表
- 2月頃:税制改正法律案を国会に提出
- 3月頃に税制改正法案の可決、4月に改正税法が施行
2023年度税制改正要望 NISAの抜本的拡充
では、改正要望のなかでNISAについての内容を確認します。
岸田政権の掲げる「資産所得倍増プラン」に関連する要望の1つとして、「NISAの抜本的拡充」を要望しています。
「簡素で分かりやすく、使い勝手のよい制度に」をテーマに次のような要望のポイントが挙がっています。
- 制度の恒久化
- 非課税保有期間の無期限化
- 年間投資枠の拡大
- 非課税限度額の拡大
- つみたてNISAと一般NISAの一本化
- 対象年齢を未成年者まで拡大
次から各要望ポイントについて、詳しく見ていきます。
① NISA制度の恒久化
NISA制度は、現状、投資可能期間がつみたてNISAは2042年まで、一般NISA(新NISA含む)は2028年まで、となっており、この期限をなくして、恒久化するということですね。
例えば、つみたてNISAは比較的若い世代の利用が増えてきていますが、これからつみたてNISAを利用可能となる年齢になる人にとっては、現行の制度では、投資可能期間がどんどん短くなってしまうので、既に始めている人と比べると不公平感があります。
制度が恒久化されれば、この不公平感もなくなりますし、若い世代が長期的な視点で資産形成に取り組みやすくなるのではないでしょうか。
② 非課税保有期間の無期限化
現状のNISA制度での非課税保有期間は、つみたてNISAは20年、一般NISA(新NISA含む)は5年となっており、これを無期限化するということです。
たとえば、つみたてNISAにて、2022年に購入分の投資信託は、2041年末までの20年間非課税で運用可能で、2041年末時点の評価額のまま特定口座あるいは一般口座へ払い出されます。
この要望は、この20年の非課税保有期間を無期限化するということなので、より長期の運用を継続しやすくなると思います。
③ 年間投資枠の拡大
現状のNISA制度での年間投資枠は、つみたてNISAは40万円、一般NISAは120万円となっており、この枠を拡大するということです。
ただ、前回の記事にて参考にしたニュースでは具体的な拡大案が出ていたものの、今回の要望では具体的な数値の記載はありませんでした。
おそらく、次の④、⑤の要望との絡みから、具体的な数値を盛り込めなかったのではないかと思います。
④ 非課税限度額の拡大
現状のNISA制度での非課税限度額は、つみたてNISAは800万円、一般NISAは600万円となっており、この枠を拡大するということです。
この非課税限度額についても、具体的な数値の記載はありませんでしたが、今回の税制改正要望が公表された2022年8月31日と同日にオンラインで実施されたNISA拡充案説明会での内容によると、1つの例として2000万円が挙がっていたようです。
今回の要望には、「簿価残高に限度額を設定」と記載があります。基本的には、簿価=取得価格と考えてよいと思います。取得価格で2000万円までを非課税限度額とするということでしょうか。
もう1つ、先ほどのNISA拡充案説明会で挙がっていた興味深い内容として、「売却による投資枠の復活」があります。現状のNISA制度では、一度売却してしまうと、その分の非課税投資枠が復活することはありません。しかし、今回の要望では、売却した額のうち簿価(取得価格)分が非課税限度額の範囲内で復活する運用を盛り込んでいるようです。
⑤ つみたてNISAと一般NISAの一本化
現状、NISAには、つみたてNISAと一般NISAがありますが、これを1つの制度に集約するということのようです。
要望内では、次のように記載があります。
安定的な資産形成を促進する観点から、長期・積立・分散投資によるつみたてNISAを基本としつつ、一般NISAの機能を引き継ぐ「成長投資枠(仮称)※」を導入
引用:金融庁資料から抜粋
で、そのイメージが下の図です。
つみたてNISAで堅実に運用して、余剰資金で成長投資枠で株式やETFを購入するということができれば、個人的にはかなり理想的な制度だなと思います。
⑥ 対象年齢を未成年者にも拡大
最後が、現在20歳以上(2023年以降は18歳以上)からとなっている対象年齢を未成年者にも拡大するという要望です。
現在、未成年者への制度として、ジュニアNISAがありますが、ジュニアNISAは2023年で投資可能期間が終了し、制度自体も終了となります。
そこで、新しいNISA制度を未成年者にも利用可能とすることで、受け皿を広げる案のようです。
まとめ:NISAの抜本的拡充
今回は2022年8月31日に金融庁から好評された2023年度税制改正要望の中で、NISA制度に関連するものを確認しました。
NISA制度に関連する要望のポイントは次の通り、
- 制度の恒久化
- 非課税保有期間の無期限化
- 年間投資枠の拡大
- 非課税限度額の拡大
- つみたてNISAと一般NISAの一本化
- 対象年齢を未成年者まで拡大
個人的には、今後にとても期待の持てる要望内容でしたが、あくまでこれは要望で、これから審議されて、12月に税制改正大綱として改正案が出ます。
これまでもNISA制度の恒久化は、要望に挙げられながら、未だ実現できていないという現実があるわけですが、今回は「資産所得倍増プラン」という大きな後ろ盾があるので、少し期待して結果を待ちたいと思います。
それではまた!!